「産業カウンセラー資格は役に立たない」
「資格取得はやめとけ」
産業カウンセラーの資格取得を検討している人の中には、このような意見を聞いて不安を感じている人もいるようです。
結論として、産業カウンセラーは実用性の高い資格であり、養成講座を通じてカウンセリングスキルやメンタルヘルスに関する幅広い知識を身につけることができます。
ですが、産業カウンセラー資格に対する期待と現実とのギャップによって、人によっては「思っていたのと違った」と感じる人もいるようです。
そこで本記事では、産業カウンセラー資格が活かせる仕事の具体例や、「役に立たない」と言われる理由について解説していきます。
産業カウンセラー資格とは?
産業カウンセラーは、一般社団法人日本産業カウンセラー協会(JAICO)が認定する民間資格です。
主に「働く人」を対象に、以下のような幅広い分野で支援を行う専門的な資格です。
産業カウンセラーの3つの活動領域
- メンタルヘルス対策への支援
- 働く人のストレスや不安などによるメンタル不調の予防や早期発見、カウンセリングなどによるフォロー。
- キャリア形成への支援
- 企業内におけるキャリアカウンセリングや研修によって、キャリア形成を支援。
転職・適職相談やキャリアの方向性に関する悩みのサポートも実施。 - 職場における人間関係開発・職場環境改善への支援
- 職場の人間関係改善や個々人の成長による職場の活性化をサポート。
時には、職場のコミュニケーションや人間関係トラブルの調整を実施。
このように産業カウンセラーは、働く人々の心の健康、職場での人間関係、そしてキャリアに関する悩みに寄り添い、サポートするカウンセリング資格です。
産業カウンセラーは民間資格ではありますが、60年以上にわたりカウンセリング教育に取り組んできた、JAICOが認定している信頼性の高い資格です。
そのため、心理学の知見を基盤に、企業や職場、教育機関など、さまざまな現場で幅広く活躍することができます。
資格 | 日本産業カウンセラー |
資格の種類 | 民間資格 |
認定団体 | 一般社団法人日本産業カウンセラー協会(JAICO) |
受験資格 | 「産業カウンセラー養成講座」の修了 ※もしくは、大学・大学院で一定の科目を修めた者も受験可能 |
主な活動領域 | ・メンタルヘルス対策への支援 ・キャリア形成への支援 ・ 職場における人間関係開発・職場環境改善への支援 |
参照:一般社団法人日本産業カウンセラー協会「産業カウンセラー試験 受験資格について」
産業カウンセラーになるには
産業カウンセラーになるためには、一般社団法人日本産業カウンセラー協会(JAICO)が実施する産業カウンセラー試験に合格し、同協会に入会する必要があります。
この試験を受けるには、原則として同協会運営の産業カウンセラー養成講座を修了していることが条件(※)となっています。
※大学院、もしくは大学にてJAICOが指定する科目を履修していれば、養成講座未受講でも受験可能
詳細は『一般社団法人日本産業カウンセラー協会「産業カウンセラー試験 受験資格について」』を参照
産業カウンセラー養成講座では、「傾聴」を基本としたカウンセリングスキルに加え、心理学やメンタルヘルスに関する基礎知識を体系的に学ぶことができるため、無資格・未経験の人でも挑戦可能です。
産業カウンセリングや理論はe-Learningで効率よく学び、特に重要なカウンセリングスキルは対面(通学もしくはオンラインにて実施)の体験学習で習得を目指します。
体験学習は「通学」「通学+オンライン」「オンラインのみ」の3種類のコースから受講方法を選ぶことができるため、忙しくて通学の時間が確保しづらい人でも、無理なく学ぶことが可能です。
講座名 | 産業カウンセラー養成講座 |
受講期間 | ・6カ月コース ・10カ月コース いずれかを選択 |
養成講座の内容 | ・理論学習:47時間(e-Learning) ・体験学習:104時間 |
体験学習の受講方法 | ・通学 ・通学+オンライン (通学28時間+オンライン76時間) ・オンラインのみ いずれかを選択 |
受講料 | 352,000円 ※一般教育訓練給付金を利用可能 |
公式HP | counselor.or.jp/portals/0/e-learning/ |

カウンセリングや心理学に関する民間資格は数多く存在し、多くは通信講座だけで取得することが可能です。しかし、通信講座のみでは、実践的なカウンセリングスキルを身につけるのは困難です。
その点、産業カウンセラーは一般社団法人日本産業カウンセラー協会(JAICO)が認定する信頼性の高い民間資格であり、知名度や社会的評価も公的資格に引けを取りません。

特に注目すべきは、104時間にもおよぶ体験学習(ロールプレイやグループワークなど)を通じて、傾聴を中心とした実践的なカウンセリングスキルをしっかりと習得できる点です。
そのため、「カウンセリングを仕事にしたい」と考える方にとって、産業カウンセラーは社会人からでも現実的に目指しやすい、魅力的な選択肢といえるでしょう。
産業カウンセラー資格の取得難易度
産業カウンセラー資格の取得難易度は、決して高くはありません。直近の試験結果は以下の通りです。
試験区分 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
学科試験 | 1,236名 | 929名 | 75.16% |
実技試験 | 488名 | 293名 | 60.04% |
総合合格者数 | 1,350名 | 890名 | 65.93% |
参照:一般社団法人日本産業カウンセラー協会「産業カウンセラー試験合否結果について」
上表のとおり、2024年度(2025年1月実施)の試験における合格率(総合合格率)は65.9%となっており、同じく心理系資格の公認心理師(国家資格)や臨床心理士と比較しても大きな違いはありません(以下表を参照)。
資格 | 合格率 |
---|---|
産業カウンセラー | 65.9% |
公認心理師 | 66.9% |
臨床心理士 | 66.1% |
参照:厚生労働省「第8回公認心理師国家試験(令和7年3月2日実施)合格発表について」
参照:公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会『「臨床心理士」資格取得者の推移』
ですが、大学院で専門的科目の履修、もしくは現場における実務経験が必要になる公認心理師や臨床心理士に比べると、6~10か月の養成講座を修了することで受験可能な産業カウンセラー資格は資格取得難易度が低いといえるでしょう。
>産業カウンセラーとキャリアコンサルタントはどちらがいいのか?
産業カウンセラーは役に立たない資格ではない
本記事の冒頭でもお伝えした通り、産業カウンセラーは決して役に立たない資格ではありません。
確かに、国家資格ではなく民間資格であるが故に、求人の必須条件となることは少ないものの、カウンセリング理論と実践の両方を学べる数少ない実践型の資格であり、企業や医療機関などからも一定の評価を得ています。
とくに、産業カウンセラー養成講座では、傾聴スキルや対人支援の基本をしっかりと学ぶことができるため、対人関係が重要なあらゆる仕事に応用可能です。
産業カウンセラーの資格が活かせる具体的な仕事は以下の通りです。
産業カウンセラーが活かせる仕事
- 心理カウンセラー
- キャリアアドバイザー
- 公的機関の職業相談員
- ジョブコーチ
- 人事部門や管理職
それぞれ詳しく解説していきます。
活かせる仕事①:心理カウンセラー
産業カウンセラーの資格を活かせる代表的な仕事として、「心理カウンセラー」が挙げられます。
民間のカウンセリングルームやメンタルクリニック、スクールカウンセラーや地域の相談窓口など、心理的な支援を求める現場では「傾聴力」や「共感的理解」が重視されます。
産業カウンセラーは養成講座の実践的なロールプレイやグループワークを通じて、実務に近いスキルを身につけることができるため、心理カウンセラーとして必要な基本的スキルを習得することが可能です。
もちろん、公認心理師や臨床心理士の方がカウンセリング職の転職においては有利ですが、産業カウンセラー資格があれば面接を受けられる求人も少なくありません。
社会人が改めて大学に入学して公認心理師等の国家資格取得を目指すのは現実的ではないため、社会人からカウンセラーを目指したい人には、産業カウンセラーは特におすすめの資格といえるでしょう。
活かせる仕事②:キャリアアドバイザー
「キャリアアドバイザー」も産業カウンセラーの資格が活かせる仕事のひとつです。
キャリアアドバイザーとは、有料職業紹介事業(転職エージェント)や人材派遣会社において、求職者の希望条件ヒアリングや求人の紹介を行う専門職です。
求職者の話にじっくり耳を傾け、本人の強みや希望を引き出すためには、傾聴力や信頼関係の構築が欠かせません。そのため、産業カウンセラーとして学ぶ「カウンセリングスキル」や「キャリア支援スキル」が大いに活かすことができる仕事といえるでしょう。
これからキャリア支援の仕事を始めたいと考えている方はもちろん、すでにキャリアアドバイザーとして働いていて「もっとスキルアップしたい」と考えている方にも、産業カウンセラーはおすすめの資格です。
実践的なスキルを身につけることで、より質の高い転職支援ができるようになるでしょう。

自己理解を促す面談技法や、行動変容を支援するカウンセリングスキルは、就職・転職支援の現場でも重宝されます。
ただし、キャリア支援領域においては国家資格である「キャリアコンサルタント」があるため、まずはキャリアコンサルタント資格の取得を検討するといいでしょう。
活かせる仕事③:公的機関の職業相談員
公的機関で働く職業相談員にも、産業カウンセラー資格を活かすことができます。
産業カウンセラーの資格は、ハローワークの職業相談員としてだけではなく、生活保護受給者や様々な事情で就職・転職が困難な人向けの職業相談・カウンセリングで力を発揮します。
産業カウンセラー養成講座で培われる傾聴スキルは、ラポール形成に役立ち、相談者が安心して話せる環境づくりが可能になるでしょう。
活かせる仕事④:ジョブコーチ
産業カウンセラーは、障がい者支援施設のジョブコーチ(職場適応援助者)の仕事にも活かせる資格です。
ジョブコーチとは、障がいがある方が職場に定着できるよう、就労先との橋渡し役を担う専門家です。
具体的には、障がい者の方に対して「職場の従業員との関わり方」「効率的な仕事の方法」等を伝えつつ、事業者に対しては「障害特性を踏まえた仕事の伝え方」や「目標設定の方法」等の助言を通し、双方の支援を行う仕事です。
参照:厚生労働省「「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援」を活用しましょう !!」
ジョブコーチの仕事においても、産業カウンセラーで学ぶ傾聴スキルや職場への介入方法などが活かせます。
また、障がい者一人ひとりの不安や課題に寄り添いながら、解決策をともに考える支援姿勢は、まさにカウンセラー的なアプローチといえるでしょう。
活かせる仕事⑤:人事部門や管理職
企業の人事部門や管理職として働く際にも、産業カウンセラー資格は強い味方になります。
従業員との1on1面談やメンタルヘルス対応、組織内の人間関係の調整など、人事・マネジメント業務には対人スキルが欠かせません。
特に、産業カウンセラーで習得する傾聴力や心理的安全性の理解は、職場環境の改善や部下のモチベーション向上に大きく貢献します。
また、ハラスメント防止や早期離職対策といった現代的な課題にも、産業カウンセラー的視点が役立つ場面が増えているといえるでしょう。

人事部門や管理職におすすめの資格としては、産業カウンセラーのほかにも「キャリアコンサルタント」や「コーチング」などが挙げられます。
これらはいずれも、講座の受講に30〜40万円程度の費用がかかる資格です。
そのため、資格取得の目的や、自社が抱える課題を明確にしたうえで、最適な資格を選ぶようにしましょう。
なぜ「産業カウンセラーは役に立たない」と言われるのか
産業カウンセラーは、対人支援のスキルやカウンセリングの基本を体系的に学べる有用な資格でありながら、一部では「役に立たない」「産業カウンセラーはやめとけ」といった声も聞かれます。
これは、資格自体の価値が低いというよりも、資格の活かし方や意義について、実態と認識に乖離があることが原因といえるでしょう。
産業カウンセラーが「役に立たない」と言われる主な理由は以下の通りです。
産業カウンセラーは役に立たないと言われる理由
- 就職・転職につながりづらい
- カウンセラーの給与が低い
- 資格取得後もトレーニングが必要
- 国家資格ではないため信頼性が低いと思われている
- 資格取得にお金がかかる

産業カウンセラーの資格を取得後、「資格が就職に直結しにくい」「カウンセラーの待遇が低い」など、現実的な課題に直面することがあります。
その結果、「産業カウンセラーは役に立たない」といった声が聞かれることもありますが、これは資格そのものに問題があるのではなく、その価値や実用性についての正しい理解が不足していることが主な原因です。
ここでは、そうした認識のギャップが生じやすいポイントについて、詳しく解説していきます。
就職・転職につながりづらい
産業カウンセラー資格を取得したからといって、それだけで就職・転職が有利になるとは限りません。
公認心理師やキャリアコンサルタント等の国家資格と比べると、企業や団体が産業カウンセラーの有資格者を積極的に募集しているケースは決して多くはありません。
そのため、資格取得後は自ら活かせる場を積極的に探す姿勢が求められます。加えて、カウンセリング職は未経験者にはハードルが高く、実務経験のある人材が優先される傾向もあります。
つまり、資格を「取れば終わり」ではなく、「どう活かすか」を主体的に考え、他のスキルや経験と組み合わせることが成功のカギになるといえるでしょう。

資格を取得しても、それだけで「カウンセラーとして採用される」「キャリア支援の専門職に就ける」というわけではありません。
そのため、就職が資格取得の目的の人の場合、結果として「転職に役立たない」「収入に直結しない」といった声につながることがあります。
カウンセラーの給与が低い
産業カウンセラーを含むカウンセリング職の多くは、一般的に高年収が見込める仕事ではありません。
カウンセラーの平均年収は430.2万円となっており、給与所得者全体の平均年収460万円よりも低いことが分かります。
比較対象 | 平均年収 |
---|---|
カウンセラー(医療福祉分野) | 430.2万円 |
給与所得者全体 | 460万円 |
参照:国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」
とくに、非常勤や委託の形で働くカウンセラーの場合、1回の相談対応に対して数千円程度の報酬となるケースもあります。
また、正社員として安定した収入を得られる職場は限られており、フリーランスや副業で活動する場合も収入の不安定さがつきまとうでしょう。
資格取得には時間とお金を要する一方で、収入面では十分なリターンが得られないと感じる人もいるため、「産業カウンセラー資格は役に立たない」という声に繋がっているようです。
資格取得後もトレーニングが必要
産業カウンセラーの資格は、あくまでスタートラインに過ぎません。資格を取得しただけでは、実際の相談現場で即戦力として活躍することは難しく、継続的な学びとトレーニングが求められます。
実際のカウンセリング現場では、クライアントの背景や状況によって求められる対応が異なり、マニュアル通りに進むことはまずありません。
そのため、カウンセラーとして就職した場合であっても、別途ロールプレイやスーパービジョン(指導・助言)などを通じて、スキルアップを図ることが必要です。
こうした継続的な努力が求められることから、「思ったよりも大変」「取得しただけでは通用しない」と感じる人も一定数存在し、それが「役に立たない」という声につながっている可能性があります。
国家資格ではないため信頼性が低いと思われている
産業カウンセラーは国家資格ではなく、あくまで民間資格であるため、信頼性に欠けると誤解されることがあります。
たしかに、キャリアコンサルタントや公認心理師のように国家資格である心理職と比べれば認知度は低く、転職においても国家資格保有者の方が有利といえるでしょう。
特に、「キャリア支援」や「カウンセリングスキル」といった共通する領域を持つキャリアコンサルタントが、2016年に国家資格として制度化されたことで、産業カウンセラーの存在感がやや薄れていることは否めません。
しかし、産業カウンセラーは日本産業カウンセラー協会が長年にわたり養成してきた実績ある資格であり、特に企業内でのメンタルヘルス対策や人材育成においては一定の信頼を得ているといえるでしょう。
とはいえ、産業カウンセラーの世間一般での認知度はそれほど高くなく、資格名だけで信頼を得たり、仕事に直結させたりするのは難しいのが現実です。
そのため、産業カウンセラーの資格に加えて、他の資格や実務経験と組み合わせることで、自身の専門性や強みを効果的にアピールしていくことが求められます。
資格取得にお金がかかる
産業カウンセラーの資格を取得するために修了が求められる養成講座は、30万円を超える受講料(※)に加え、通学する場合は交通費や時間的拘束も生じるため、金銭的・時間的な負担は少なくありません。
※詳細は本記事の「産業カウンセラーになるには」で解説
さらに、試験合格後に産業カウンセラーを名乗るためには、一般社団法人日本産業カウンセラー協会に入会して登録を行う必要があり、入会金および年会費を支払う必要があります。また、資格は5年毎に更新が必要で、その際も更新料が必要です。
このように、産業カウンセラーは民間資格であるにも関わらず、資格の取得・維持に決して安くはないお金が必要になるため、費用対効果を考えたときに、「その分のリターンがあるのか」と疑問に感じる人がいるようです。
しかし、資格取得を通じて得られるのは知識や肩書きだけでなく、自己理解やコミュニケーション力の向上といった「無形の価値」も多くあります。
そのため、費用対効果(コスパ)だけにとらわれず、長期的な自己投資としてのメリットにも目を向けて判断することが重要といえるでしょう。
産業カウンセラーと比較されやすいオススメ資格
産業カウンセラー資格の取得を検討していると、似たような分野の資格と比較して「どれを取るべきか迷う」という方も少なくありません。
実際、心理支援やキャリア支援の分野には複数の有用な資格があり、それぞれ異なる特徴や強みを持っています。
ここでは、産業カウンセラーとよく比較される以下の代表的な資格をご紹介します。
資格 | 資格の種類 | 資格の取得難易度 | 特徴 |
キャリアコンサルタント | 国家資格 | 普通 | ・キャリア理論とカウンセリングスキルが身に付く ・活躍できる領域が広い ・未経験者でも養成講座を修了すれば受験可能 |
公認心理師 | 国家資格 | やや難しい | ・国内で初めての心理系国家資格 ・心理支援やカウンセリングが必要な幅広い分野で活躍可能 |
臨床心理士 | 民間資格 | やや難しい | ・民間資格ではあるものの、 信頼性と汎用性が高い |
キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントは、職業選択・キャリア形成や能力開発を支援する専門職で、職業能力開発促進法において2016年に国家資格化されました。
厚生労働省に登録される国家資格という信頼性の高さに加え、転職エージェントや人材派遣会社、企業やハローワーク、大学のキャリアセンターなど、活躍場所が非常に幅広い点が魅力の資格です。
キャリアコンサルタント養成講座を修了すれば、未経験者でも受験が可能です。さらに、年に数回実施される国家試験の合格率はおおむね50〜60%程度で推移しており、資格取得のハードルは比較的高くないといえるでしょう。
産業カウンセラーとの大きな違いは、より職業支援に特化している点にあります。そのため、対人支援の中でもキャリア支援・転職支援を中心に活動したい人や、企業内で人事や研修に携わっている人には特におすすめの資格です。
また、産業カウンセラーとWライセンスで取得することで、相談支援の幅をさらに広げることが可能です。
資格 | キャリアコンサルタント |
資格の種類 | 国家資格 |
資格の取得難易度 | 普通 |
試験の合格率 | 約50~60% >キャリコン試験の合格率はコチラで解説 |
受験資格 | ・キャリアコンサルタント養成講座の修了 ・3年以上の実務経験 ※上記どちらかを満たせば受験可能 |
主な活動領域 | ・転職エージェント ・人材派遣会社 ・ハローワーク ・大学のキャリアセンター ・研修講師 ・企業の人事部門 |

一般社団法人日本産業カウンセラー協会でもキャリアコンサルタント養成講座を開講しており、
傾聴スキルを中心としたキャリアカウンセリングを学ぶことが可能です。
公認心理師
公認心理師は、2017年に誕生した日本で初めての心理職の国家資格です。
主に医療や福祉、教育などの分野で、専門的な心理支援や分析、相談・助言を行うことを目的としており、心理学の基礎知識やアセスメントスキル、相談スキルなど、幅広い分野の知見が求められます
公認心理師試験を受けるためには、大学院で一定の科目を履修するか、4年制大学で定められた科目を修めたうえで実務経験を積むことが必要です。
そのため、産業カウンセラーに比べると資格取得の難易度はかなり高いといえるものの、本格的に心理の専門職として活躍したい人にとって、公認心理師は挑戦する価値のある資格といえるでしょう。
資格 | 公認心理師 |
資格の種類 | 国家資格 |
資格の取得難易度 | やや難しい |
試験の合格率 | 約50~75% |
受験資格 | ・大学院で、必要科目を履修 ・大学で必要科目を履修したうえで2年以上の実務経験 ※上記いずれかを満たす必要がある |
主な活動領域 | 保健医療や福祉、教育分野のカウンセラーや心理職 |
参照:厚生労働省「公認心理師試験の受験を検討されている皆さまへ」

公認心理師は、本格的に心理支援職として活躍したい人におすすめの国家資格です。
ただし、社会人が目指す場合は、原則として大学への入学からスタートする必要があるため、時間や費用の負担が大きくなります。
そのため、産業カウンセラーと比較すると、取得のハードルは高い資格といえるでしょう。
臨床心理士
臨床心理士は、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格です。
民間資格ではあるものの、公認心理師創設以前は国内で最も信頼性の高い資格であったため、今でも心理カウンセラーなどの募集要項に記載されるニーズの高い資格です。
活躍の場は医療機関や学校、福祉分野や司法・矯正機関まで様々で、深い心理的課題への支援を担う役割があります。産業カウンセラーと比較すると、より専門的・治療的な支援を担うことが多く、相談内容も複雑化しやすい傾向があるといえるでしょう。
合格率はおおむね60~70%程度となっているものの、受験資格には臨床心理士指定大学院の修了が必要であり、公認心理師と同程度に取得が難しい資格です。
資格 | 臨床心理士 |
資格の種類 | 民間資格 |
資格の取得難易度 | やや難しい |
試験の合格率 | 60~70% |
受験資格 | 【主な受験資格】 ・指定大学院を修了し、所定の条件を満たす ・臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了 |
主な活動領域 | 医療・福祉・教育・司法等、非常に幅広い分野で活躍 |
参照:公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会「受験資格」
産業カウンセラー資格は役に立たないと言われる理由まとめ
産業カウンセラーの資格は、以下の理由から「役に立たない」「資格取得はやめとけ」と言われることがあります。
- 就職・転職につながりづらいから
- カウンセラーの給与が低いから
- 資格取得後もトレーニングが必要だから
- 国家資格ではないため信頼性が低いと思われているから
- 資格取得にお金がかかるから
ですが、産業カウンセラーは民間資格ではあるものの、カウンセリングスキルやメンタルヘルスへの幅広い知識を身につけることができる信頼性の高い資格のため、スキルを磨けば様々な仕事に活かすことが可能です。
特に、社会人から対人支援職やカウンセラーの仕事を目指したいと考えている人には、産業カウンセラーは特にオススメの資格といえるでしょう。