長寿化が進んで「人生100年時代」と言われる現代においては、60歳・65歳で定年退職したとしても、「もっと働きたい」「新しいことに挑戦したい」と考える人は珍しくありません。
定年後もやりがいを持って働き、イキイキと生活するためにおすすめな方法が「資格の取得」です。
資格取得を通して新しいスキルや知識を身につけることで、再就職や地域との交流にも活かせることに加え、60歳以降のライフワークの発見にもつながるでしょう。
本記事では、定年後に役立つおすすめ資格を一覧比較表を用いて紹介します。取得すべき資格の選び方やメリット、注意点についても解説しているので、是非ご確認ください。
難易度や必要な費用を一覧表で解説
定年後に取得すべき資格の選び方
定年を迎えた後も、「まだ社会と関わりたい」「新たな挑戦をしたい」と考える人は少なくありません。その際、体系的な知識やスキルの証明になる資格取得は、大きな武器になるでしょう。
しかし、闇雲に資格を選んでも活かせなければ意味がありません。資格選びで重要なのは、実用性・興味・将来像のバランスです。
定年後に取得すべき資格の選び方のポイントは以下の通りです。
たとえば、過去の職歴やスキルを活かせる分野の資格であれば、スムーズに学びを深められることに加え、再就職や起業の選択肢を広げることが可能です。
一方で、「まったく新しい分野に挑戦したい」という意欲がある方は、自身の興味や関心を第一に考えるのも良いでしょう。
自分自身の適性やライフスタイル、60歳以降の将来像や社会との関わり方を明確にした上で、資格選びを進めることがおすすめです。

定年後の資格取得は、目的を明確にすることが何より重要です。
収入の確保か、生きがい探しか。目標を整理することで、資格選びの軸がぶれず、充実した第二のキャリアにつなげることができるでしょう。
これまでの経験を活かせる資格を選ぶ
定年前の仕事で培ったスキルや知識は、60歳以降も大きな財産になります。経験を活かせる資格を選べば、学習負担が軽減されるだけではなく、実践的な活用もしやすくなります。
たとえば、営業職の経験者なら「宅地建物取引士」「キャリアコンサルタント」、人事・労務の経験がある人の場合は「社会保険労務士」などの資格を取得することで、再就職や独立に活かすことができるでしょう。
さらに、仕事で指導的な立場を経験していた方は「日本語教師」の資格を取って、外国人へ日本語を教える仕事にも適性があるといえるでしょう。
このように、定年後の資格取得を考える際は、これまでのスキルや経験を棚卸した上で、親和性の高い資格を選ぶことが重要になります。
※これまでの経験を活かせる資格は「定年後に役立つおすすめ資格一覧表」でご確認ください。

過去の経験を活かす資格を選ぶことで、「自分にもできる」という自信が生まれ、学習への意欲を保ちやすくなります。
さらに、勉強を進めるなかで、これまでの仕事の意味や価値を新たに見つめ直すことにもつながり、学ぶこと自体がより楽しく感じられるでしょう。
再就職や独立が可能な資格を選ぶ
定年後も収入を得たいと考えている場合、再就職や独立に直結する資格選びが重要です。ビジネスにおいて需要の高い資格を選ぶことで、年齢に左右されずに活躍できる可能性が広がります。
たとえば、「介護職員初任者研修」「宅建士」「行政書士」「キャリアコンサルタント」などはシニア層の活躍も目立つ資格です。
また、独立を視野に入れている場合は、「社会保険労務士」や「行政書士」など、独占業務を持つ国家資格を選ぶことで、開業後の成功につながりやすくなります。
資格は、自分のスキルを示す「武器」であると同時に、相手に安心感を与える「信頼の証」でもあります。仕事につなげることを前提に、実務で活かせる資格を見極めることが、定年後の資格取得で成果を上げるためのポイントといえるでしょう。
※再就職や独立に役立つ資格は「定年後に役立つおすすめ資格一覧表」でご確認ください。

ただし、どんな資格を取っても必ず再就職や独立につながるとは限りません。
だからこそ、これまでの経験や興味、そして60代以降にどのように社会と関わっていきたいかという自分なりの理想像をもとに、目的に合った資格を慎重に選ぶことが重要です。
興味がある分野から選ぶ
定年後の人生は、時間に余裕が生まれる分、自分の「好き」や「関心」に素直に向き合える時期です。そのため、興味のある分野から資格を選べば、学びそのものが楽しみに変わります。
たとえば、料理好きなら「調理師」「食生活アドバイザー」、写真撮影や機械の操縦が好きなら「ドローン資格」などもおすすめです。
好きなことを深掘りすることで、趣味から副業に発展する可能性もあります。60代以降の新たな生き方を模索するうえで、生活の質や人生の満足度を高めるうえで、「好き」や「興味」を原動力にする資格選びも非常に有用といえるでしょう。
※興味がある資格は「定年後に役立つおすすめ資格一覧表」でご確認ください。

自身の興味から資格を選ぶと、「学び続ける楽しさ」を得られるのが魅力です。
定年後に資格を取得するメリット
60歳に定年退職すると仮定すると、その後の人生は平均して20年以上あることになります。
この「第二の人生」をより充実したものにする手段として、資格取得は非常に様々なメリットがあります。定年後に資格取得するメリットは以下の通りです。
再就職や独立といった選択肢を広げられるだけでなく、学び直しによって新たな目標が生まれ、生活に張りが出るという心理的メリットもあります。
それぞれ詳しく解説していきます。
再就職に有利になる
「定年後に働きたい」と考える方にとって、資格は再就職の大きな武器になります。
2021年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行されたことで、定年制の廃止や定年の引き上げ(70歳まで)が努力義務として求められるようになったことで、60歳以降も働きやすい環境が整っているといえます。
実際に定年を過ぎても働く人は多く、2024年のデータでは65歳以上の25.7%(男性34.2%・女性:19.1%)が就業していることが分かっています(以下図表を参照)。

参照:厚生労働省「労働力調査(基本集計)2024年(令和6年)平均結果の概要」
年 | 男性 | 女 | 男女計 |
---|---|---|---|
2014 | 29.3 | 14.3 | 20.8 |
2015 | 30.3 | 15.0 | 21.7 |
2016 | 30.9 | 15.8 | 22.3 |
2017 | 31.8 | 16.3 | 23.0 |
2018 | 33.2 | 17.4 | 24.3 |
2019 | 34.1 | 17.8 | 24.9 |
2020 | 34.2 | 18.0 | 25.1 |
2021 | 34.2 | 18.2 | 25.1 |
2022 | 34.2 | 18.3 | 25.2 |
2023 | 34.0 | 18.5 | 25.2 |
2024 | 34.2 | 19.1 | 25.7 |
60歳を過ぎても積極的に雇用しようという社会の動きが広がっている現在、これまでの経験を活かして働く場合や、定年後に嘱託社員として同じ会社で働き続ける場合には、必ずしも資格が必要になるわけではありません。
ですが、未経験の業界や職種に挑戦する場合は、資格の取得が再就職に直結する場合が多いでしょう。
特に、福祉業界では資格が重視される傾向が強く、「介護職員初任者研修」という入門資格を取得すれば、60代以降でも採用されやすくなるでしょう。

転職活動の際には、資格の有無で応募できる求人の条件が変わることがよくあります。
定年後の再就職では「これまでの社会人経験+資格」が非常に重要になるため、戦略的に資格を選びましょう。
独立開業も可能
定年後に自由な働き方を求める方には、資格を活かして独立開業するという選択肢もあります。
定年後の独立に役立つ代表的な資格には「行政書士」「社会保険労務士」などの独占業務を持つ国家資格が挙げられます。また、これまでコンサルタントや特定分野の第一人者として活躍してきた人の場合は、「中小企業診断士」の資格も役に立つでしょう。
これらの資格は、顧客と直接やり取りする業務が多いため、これまで積み上げてきた人脈や信頼が強みとなるでしょう。
ただし、いずれの資格も未経験からいきなり独立することは現実的ではありません。これまでの職業人生の中で実務に触れていない場合は、資格取得後に一定の修業期間が必要になるため、注意しておきましょう。

独立を考えるなら、資格取得と同時に「どのような顧客を対象にするのか」「どの地域や市場に需要があるか」を明確にすることが重要です。
試験勉強と並行して、具体的な開業計画も立てていくようにしましょう。
資格試験の勉強時間を確保しやすい
現役時代に比べて時間的な余裕がある定年後は、資格取得に向けた勉強時間を確保しやすい時期です。
平日の日中に勉強時間を確保できれば、スクールや講座にも通いやすく、学習効率が高まります。また、インターネットを活用すれば、自宅でもオンライン講座で学ぶことが可能です。
500~1,000時間程度の学習時間が必要と言われる「社会保険労務士」や「行政書士」等の難関国家資格であっても、集中して学べば、十分に一発合格を目指すことが可能といえるでしょう。

定年後、年金を受給して働いていない場合や、時短勤務の嘱託社員として再雇用されている場合は、時間にゆとりがあるため、難関資格にも挑戦しやすい環境だと言えるでしょう。
生きがいにつながる
資格取得は、新しいことを学ぶ喜びや達成感を得られるため、生きがいや自己肯定感の向上につながります。
特に、ボランティア活動や地域貢献に活かせる資格を取得すれば、社会との関わりを保ちながら充実した日々を過ごすことができます。
例えば、「日本語教師」の資格を取得して地域の外国人へボランティアで日本語を教えたり、「キャリアコンサルタント」の資格を取得して公的機関で職業相談に乗ること等が考えられます。

60歳以降の定年後に資格を取得する際、もし働く必要があまりないのであれば、必ずしも「仕事に直結する資格」にこだわる必要はありません。
むしろ、資格を通じて人とのつながりが生まれたり、誰かの役に立つことができれば、それが生きがいややりがいにつながります。
その意味でも、定年後の資格取得は非常におすすめです。
定年後に役立つおすすめ資格10選
定年後に役立つおすすめの資格は以下の通りです。
資格 | 資格の種類 | 取得難易度 | 必要な費用(目安) |
キャリアコンサルタント | 国家資格 | 普通 | ・キャリアコンサルタント養成講座受講費用:30~40万円 ・受験料:38,800円(学科試験 8,900円+実技試験 29,900円) |
日本語教師 | 国家資格 | 普通 | ・日本語教師養成講座受講費用:50~70万円 ・基礎試験及び応用試験の受験料:18,900円 (基礎試験免除の場合、免除資格の確認及び応用試験受験料 17,300円) |
社会保険労務士 | 国家資格 | 非常に難しい | 受験料:15,000円 |
行政書士 | 国家資格 | 非常に難しい | 受験料:10,400円 |
介護職員初任者研修 | 公的資格 | 簡単 | 講座受講料:5~10万円 |
宅建 | 国家資格 | 難しい | 受験料:8,200円 |
マンション管理士 | 国家資格 | 難しい | 受験料:9,400円 |
中小企業診断士 | 国家資格 | 非常に難しい | ▽受験料 ・1次試験:1万4,500円 ・2次試験:1万7,800円 |
ドローン資格 | 国家資格 | 普通 | ▽受験料 ・一等学科試験:9,900円 ・二等学科試験:8,800円 ・実地試験:19,800円~23,800円 (機体の種類により異なる) |
登録販売者 | 公的資格 | 普通 | 受験手数料:13,600円 (東京都の場合) |
上記の10の資格はいずれも、定年後の人生をより豊かにしてくれる可能性を秘めています。
資格を選ぶ際は、「これまでの経験」「興味・関心」「今後の働き方の希望」といった、自分自身の状況に合ったものを選ぶことが大切です。
再就職や独立を目指すのか、地域に貢献したいのか、あるいは趣味を深めたいのか、その目的を明確にし、自分らしいライフスタイルを実現する手段のひとつとして、資格取得を前向きに検討するといいでしょう。
それぞれの資格について、詳しく解説していきます。

筆者が個人的に特におすすめしたい資格は「キャリアコンサルタント」です。
公的機関や企業のキャリア相談室、さらには転職エージェントなど、活躍できる場が幅広く、自身の社会人としての経験を存分に活かせるのが大きな魅力です。
定年後も人の役に立ちながら、やりがいのある働き方を実現したい方には、非常に適した資格と言えるでしょう。
キャリアコンサルタント
資格名 | キャリアコンサルタント |
資格の種類 | 国家資格 |
独占業務 | 無し |
取得難易度 | 普通 |
試験の合格率 | 50~60%程度 |
合格者の平均年齢 | 45.3歳(第28回試験) |
60代以降の合格者の割合 | ・学科試験:8.2%(第28回試験) ・実技試験:7.9%(第28回試験) |
学習時間の目安 | 100~200時間 ※別途、厚生労働大臣認定の講習(150時間)を受講する必要有 |
講座受講の必要性 | キャリアコンサルタント養成講座の受講が必要 ※実務経験がある場合は免除 |
必要な費用(目安) | ・キャリアコンサルタント養成講座受講費用:30~40万円 ・受験料:38,800円(学科試験 8,900円+実技試験 29,900円) |
参照:厚生労働省「第28回キャリアコンサルタント試験結果の概要」
キャリアコンサルタントは、働く人々の職業選択やキャリア形成、職場での課題解決などを支援する国家資格です。
キャリア支援の仕事が未経験であっても、厚生労働大臣が認定する講習(通称:キャリアコンサルタント養成講座)を修了することで、国家試験に挑戦できます(※)。
※3年以上の実務経験があれば、講習を受けなくても受験可能
キャリアコンサルタントは、これまでのあらゆる職業経験を活かせる仕事といえますが、なかでも人生経験が豊富なシニア世代にとっては、これまでの知見や職業知識を大いに活かせる分野といえるでしょう。
活躍の場は幅広く、ハローワークや再就職支援機関、大学のキャリアセンター、企業の人事部門やキャリア相談室などが代表的な就職先として挙げられます。
また、フリーランスとして独立開業し、セミナー講師や個別相談業務を行う方も少なくありません。年齢による制約が少なく、クライアントの信頼を得るためにはむしろ「人生経験」が重視されるため、定年後の仕事として非常に相性が良いといえます。
資格取得後は、国家資格キャリアコンサルタントとして登録・更新制度(5年ごと)があるため、継続的な学びと実務経験が求められます。学び続ける意欲と、人に寄り添う姿勢があれば、長期にわたり活躍できる国家資格です。

キャリアコンサルタント養成講座では、キャリア理論やカウンセリングスキルなどを体系的に学ぶことができ、その学びを通じて定年後の自分自身のキャリアを見つめ直す良い機会にもなります。
また、身につけた相談スキルは、家族や地域社会との良好な関係づくりにも役立つため、「一生使える資格」として非常におすすめです。

定年後にキャリアコンサルタント資格の取得を目指す際は、ヒューマンアカデミーのような大手スクールで講座を受講するといいでしょう。
日本語教師(登録日本語教員)
資格名 | 登録日本語教員 |
資格の種類 | 国家資格 |
独占業務 | 無し ※認定日本語教育機関に働くためには、「登録日本語教員」の資格が必要 |
取得難易度 | 普通 |
試験の合格率 | 43.5%(2024年度) ※全試験免除者を除く |
合格者の平均年齢 | 不明 |
60代以降の合格者の割合 | 不明 |
学習時間の目安 | 養成講座受講の場合は420時間以上 |
講座受講の必要性 | 不要だが、養成機関で課程を修了することで基礎試験が免除される |
必要な費用(目安) | ・日本語教師養成講座受講費用:50~70万円 ・基礎試験及び応用試験の受験料:18,900円 (基礎試験免除の場合、免除資格の確認及び応用試験受験料 17,300円) |
参照:文部科学省「令和6年度日本語教員試験実施結果をお知らせします」
日本語教師は、外国人に日本語を教える専門職で、言語だけでなく文化や生活習慣の指導も担います。グローバル化の進展に伴い、国内外で日本語を学ぶ人の数は年々増加しており、日本語教師のニーズも高まっています。
定年後の働き方として、日本語教師は「年齢に関係なく活躍できる」「海外でも仕事ができる」「教えることにやりがいを感じられる」といった特徴から人気を集めています。
主な活躍の場は、日本語学校、企業の語学研修、自治体の外国人支援プログラム、オンライン教育など多岐にわたります。語学力よりも、「わかりやすく伝える力」「相手の文化を尊重する姿勢」「柔軟な対応力」が重視されるため、社会経験豊富なシニア世代に向いている仕事といえるでしょう。

国家資格である「登録日本語教員」には複数の取得ルートがありますが、独学での試験合格率は非常に低く、2024年度の基礎試験ではわずか8.8%という結果でした。
こうした状況を踏まえると、日本語教師養成機関で体系的に学ぶルートを選ぶ方が、確実性や学習効率の面でもおすすめです。
社会保険労務士
資格名 | 社会保険労務士 |
資格の種類 | 国家資格 |
独占業務 | 有り |
取得難易度 | 非常に難しい |
試験の合格率 | 5~10% (第55回試験の合格率:6.4%) |
合格者の平均年齢 | 不明 |
60代以降の合格者の割合 | 7.5% |
学習時間の目安 | 800~1,000時間 |
講座受講の必要性 | 不要 |
必要な費用(目安) | 受験料:15,000円 |
参照:厚生労働省「社会保険労務士試験の結果について」
社会保険労務士(社労士)は、労働法や社会保険制度に関する専門家で、企業の就業規則の作成や労務管理、助成金申請、年金相談など幅広い業務を担います。
働き方改革や高齢者雇用の促進、育児・介護と仕事の両立支援が重視される今、社労士のニーズは拡大傾向にあります。
定年後でも、これまでの人事・労務経験や経営の知見を活かして再就職や独立を目指すことができ、顧問契約などで安定収入を得ることも可能です。
また、実務を通じて中小企業の成長をサポートしたり、労働トラブルの予防につながる提案をするなど、社会的意義の高い活動ができるのも大きな魅力です。

社会保険労務士は合格率の低い難関資格ですが、現役時代よりも時間の融通が利く定年後であれば、十分に合格を目指すことができるでしょう。

ただし、実務経験がない状態でいきなり独立するのは非常にハードルが高いため、最初の数年間は現場で経験を積む「修業期間」が必要になることを、あらかじめ理解しておきましょう。
行政書士
資格名 | 行政書士 |
資格の種類 | 国家資格 |
独占業務 | 有り |
取得難易度 | 非常に難しい |
試験の合格率 | 10~15% (2024年度は12.90%) |
合格者の平均年齢 | 不明 |
60代以降の合格者の割合 | 7.5% (2024年度試験の割合) |
学習時間の目安 | 600~1,000時間 |
講座受講の必要性 | 不要 |
必要な費用(目安) | 受験料:10,400円 |
参照:行政書士試験研究センター「令和6年度行政書士試験実施結果の概要」
行政書士は、官公庁に提出する書類の作成や申請代行を行う国家資格で、法律系の中でも比較的取得しやすく、実務でも非常に幅広い分野に関わることができます。
具体的には、相続・遺言書の作成、外国人の在留資格申請、自動車関連の登録手続き、建設業許可申請などがあり、個人・法人の両方からニーズがあります。
定年後でも自宅開業が可能で、机ひとつからスタートできる点や、地域密着で活動できる点が大きな魅力です。文書作成が得意な方や、丁寧なコミュニケーションができる方に向いている資格といえるでしょう。

行政書士は地域と人をつなぐ法務の窓口であり、「身近な街の法律家」とも呼ばれています。
人生経験を活かして、人や企業のの困りごとに寄り添いながら具体的な支援を行う国家資格として、定年後に再就職・独立を目指す人におすすめです。
介護職員初任者研修
資格名 | 介護職員初任者研修 |
資格の種類 | 公的資格 |
独占業務 | 無し |
取得難易度 | 簡単 |
試験の合格率 | 不明 (講座受講者のほとんど全員が資格取得) |
合格者の平均年齢 | 不明 |
60代以降の合格者の割合 | 不明 |
学習時間の目安 | 130時間 |
講座受講の必要性 | 介護職員初任者研修の受講が必要 |
必要な費用(目安) | 講座受講料:5~10万円 |
介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)は、介護業界における入門的資格であり、未経験でも取得しやすい点が特徴です。
介護職員初任者研修は、都道府県が指定する研修機関で講座を修了すれば取得でき、介護に関する基礎知識や身体介助の実践的なスキルを身につけることができます。
日本はすでに超高齢化社会に突入しており、介護職は慢性的な人手不足に直面しています。そのため、60代以降であっても体力に問題がなければ、未経験からでも就職できるチャンスは十分にあります。
無資格でも働ける施設はありますが、初任者研修の資格を持っていれば、就業の幅が広がり、より良い条件で働ける可能性が高くなるでしょう。

介護職員初任者研修は、「誰かの役に立ちたい」という気持ちが強い方にはぴったりの資格です。
体力に自信がない方でも、比較的軽度な支援業務やデイサービスなど、働きやすい職場を選ぶことで長く続けることができます。
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宅建(宅地建物取引士)
資格名 | 宅地建物取引士 |
資格の種類 | 国家資格 |
独占業務 | 有り |
取得難易度 | 難しい |
試験の合格率 | 15~20% (2024年度は18.6%) |
合格者の平均年齢 | 35.9 歳 |
60代以降の合格者の割合 | 不明 |
学習時間の目安 | 300~500時間 |
講座受講の必要性 | 不要 |
必要な費用(目安) | 受験料:8,200円 |
参照:一般社団法人不動産適性取引推進機構「令和6年度宅地建物取引士資格試験結果の概要」
宅建(宅地建物取引士)は、不動産売買や賃貸契約に関する重要事項を説明し、契約をサポートする不動産取引の専門家資格です。
不動産業者には「5人に1人以上の割合で宅地建物取引士を配置する」義務があるため、宅建資格を持つ人材は常に求められています。そのため、60歳以降であっても、宅建の資格を合格すれば就職・転職のチャンスが広がります。
試験は年1回実施され、合格率は15~20%程度とやや難易度は高めですが、独学でも合格が可能です。定年後に学習時間をしっかり確保できる方にとっては、現実的な難易度といえるでしょう。

不動産の知識は、自身の相続や住宅売買にも活かせるため、定年後の人生設計においても有用な武器となります。
マンション管理士
資格名 | マンション管理士 |
資格の種類 | 国家資格 |
独占業務 | 無し |
取得難易度 | 難しい |
試験の合格率 | 10%前後 (2024年度は12.7%) |
合格者の平均年齢 | 48.8歳 |
60代以降の合格者の割合 | 21.02% |
学習時間の目安 | 500~700時間程度 |
講座受講の必要性 | 不要 |
必要な費用(目安) | 受験料:9,400円 |
参照:公益財団法人マンション管理センター「令和6年度マンション管理士試験の結果について」
マンション管理士は、マンションの管理運営に関する専門知識をもとに、管理組合や住民の相談に応じたり、問題解決のアドバイスを行う専門職です。
マンションの老朽化や住民の高齢化が進むなか、管理運営に関するトラブルや課題も複雑化しており、専門家の存在がますます重要になっています。
この資格の魅力は、実務における「アドバイザー」という立場で、身体的な負担が少ないことです。また、住民との信頼関係が重視されるため、誠実で丁寧な対応ができるシニア層にとって非常に適性のある仕事といえるでしょう。
合格率は約8〜9%と難関ですが、法律・会計・不動産など幅広い知識が学べるため、自己啓発の面でも大きな価値があります。

マンション管理士は、住民の課題を解決し、暮らしの安心を支える存在です。そのため、知識を活かして地域貢献をしたい方に最適な国家資格です。
また、マンションを保有している人にとっては、「自分の住まいを守る」という視点でも実用的な資格といえるでしょう。
中小企業診断士
資格名 | 中小企業診断士 |
資格の種類 | 国家資格 |
独占業務 | 無し |
取得難易度 | 非常に難しい |
試験の合格率 | ・1次試験:20~40%(2024年度:27.5%) ・2次試験:20%前後(2024年度:18.7%) |
合格者の平均年齢 | 不明 |
60代以降の合格者の割合 | ・1次試験:6.3% ・2次試験:3.5% ※2024年度試験 |
学習時間の目安 | 1,000~1,200時間 |
講座受講の必要性 | 不要 |
必要な費用(目安) | ▽受験料 ・1次試験:1万4,500円 ・2次試験:1万7,800円 |
参照:中小企業診断士協会連合会「過去の試験結果・統計資料」
中小企業診断士は、「経営コンサルタント」として国が認める唯一の国家資格であり、企業の経営課題を分析し、改善提案を行う仕事です。
業務内容は、経営戦略の立案から業務効率の改善、人材育成支援、事業承継など非常に多岐にわたります。中小企業の経営支援に特化しているため、ビジネスにおける実務経験豊富なシニア層との相性が非常に良い点も特徴です。
試験は1次・2次に分かれており、合格までにはある程度の学習期間が必要です。ただし、内容は実務に直結しており、ビジネス経験者にとっては理解しやすい領域も多く、やりがいも十分です。
資格取得後は、独立開業のほか、商工会議所や中小企業支援センターなどの仕事を請けて収入を得ることも可能です。

中小企業診断士は、コンサルタントや経営企画などの実務経験がある方に特におすすめの資格です。
この資格を取得すれば、これまでに培ってきた人脈やビジネス経験、論理的思考力を活かしながら、定年後もやりがいのある仕事に携わることができます。

ただし、コンサルタントとして独立を目指す場合でも、中小企業診断士の資格は必須ではありません。
そのため、資格取得にかかる時間や労力、自身のキャリアプランとの兼ね合いを踏まえて、取得の必要性やタイミングについては慎重に見極めましょう。
ドローン資格(無人航空機操縦士)
資格名 | ドローン資格(無人航空機操縦士) (一等・二等の2種類) |
資格の種類 | 国家資格 |
独占業務 | 有り |
取得難易度 | 普通 |
試験の合格率 | 不明 |
合格者の平均年齢 | 不明 |
60代以降の合格者の割合 | 不明 |
学習時間の目安 | 50~100時間 |
講座受講の必要性 | 登録講習機関の所定の講習を受けることが望ましい |
必要な費用(目安) | ▽受験料 ・一等学科試験:9,900円 ・二等学科試験:8,800円 ・実地試験:19,800円~23,800円 (機体の種類により異なる) |
ドローンは空撮、点検、測量、農薬散布など、近年急速にニーズが拡大している分野です。
これまではドローンに関する資格は民間資格のみでしたが、2022年から「無人航空機操縦者技能証明制度」が始まり、国家資格化され、「無人航空機操縦士」が誕生しました。
これは、ドローンを飛行させるのに必要なスキルと知識を持つことを証明する資格制度であり、一等資格を取得すればレベル4飛行(有人地帯における補助者なし目視外飛行)も可能になります。
ドローン操縦に関する民間資格も多数ありますが、2025年12月からは国土交通省への飛行許可申請の簡略化に使えなくなるため、これから資格取得をかんがえている人は、国家資格である「無人航空機操縦士」の取得を目指すといいでしょう。

新しい技術を身につけたい方にとって、ドローンは学びがいのある分野です。
ドローン資格の取得および活動には、機材の購入費や講習費はかかるものの、趣味と実益を兼ねた副業・起業を始めることが可能になります。
登録販売者
資格名 | 登録販売者 |
資格の種類 | 公的資格 |
独占業務 | 無し ※独占業務ではないが、一般用医薬品(第2類・第3類)の販売が可能 |
取得難易度 | 普通 |
試験の合格率 | 40~50% (2024年度の全国平均は46.7%) |
合格者の平均年齢 | 不明 |
60代以降の合格者の割合 | 不明 |
学習時間の目安 | 200~300時間 |
講座受講の必要性 | 不要 |
必要な費用(目安) | 受験手数料:13,600円 (東京都の場合) |
登録販売者は、薬局やドラッグストアで第2類・第3類医薬品を販売することができる資格で、医療系の資格の中でも比較的取得しやすく、特にシニア層から高い人気があります。
薬剤師が不在でも医薬品を販売できる体制を整えるため、登録販売者の需要は全国的に高く、パート・アルバイトから正社員まで幅広い就業形態があります。
試験範囲は、医薬品に関する知識、人体の構造、医薬品販売制度など実務的な内容が中心で、日常生活にも活かせる内容といえるでしょう。
そのため、特に健康や医療に興味がある方にとっては学ぶ意義が大きく、仕事を通じて地域の人々の健康を支えるやりがいも感じられます。

登録販売者はドラッグストアや大型スーパー、ホームセンターやコンビニなどで勤務することが多く、「生活に密着した専門性」を持つ仕事です。
接客が好きな方や、地域に根ざした働き方をしたい人におすすめの資格です。
定年後に資格取得する際の注意点
資格取得は、定年後の新しい目標や再就職の手段として非常に有効ですが、「思っていたより大変だった」「資格を取ったのに活かせなかった」といった声も少なくありません。
特に、学び直しが久しぶりという方にとっては、情報収集や準備不足が思わぬ落とし穴になることもあります。ここでは、定年後に資格取得を検討する際に注意しておくべきポイントを3つご紹介します。
それぞれ詳しく解説していきます。
資格の取得には時間がかかる
資格の中には、短期間で取得できる手軽なものもあれば、半年から1年以上かけてじっくり取り組む必要があるものもあります。
特に国家資格や専門性の高い資格は、試験範囲が広く、十分な学習時間を確保しなければ合格が難しいことが多いのが現実です。
定年後は比較的時間の余裕があるとはいえ、家庭の事情によって思うように勉強時間を確保できないこともあるでしょう。
す。
また、内容によっては独学では理解が難しく、通信講座や通学講座を活用したほうが効率的に学べるケースもあります。
そのため、定年後に資格取得を目指す際は、必要な学習期間をあらかじめ把握し、無理のない計画を立てて、焦らず継続できるプランを立てることが重要になります。

定年後に再就職を目指す場合は、「資格を取得してから就職するのか」、あるいは「まず働き始めてから並行して資格を取得するのか」といった進め方も、あらかじめ考えておくことが大切です。
資格によっては高額な講座で学ぶ必要がある
一部の資格では、受験前に指定された講座の受講が義務づけられていたり、実務経験を積むための研修が必要な場合があります。
国家資格を取得するための講座の場合、その費用は数十万円以上かかることもあるため、事前に理解しておく必要があります。
資格取得の講座と受講料の例
- キャリアコンサルタント養成講座
- 30~45万円が受講料の相場
- 日本語教師養成講座
- 50~70万円が受講料の相場
- 介護職員初任者研修
- 6~10万円が受講料の相場
定年後は収入源が限られている中で、高額な講座に申し込むことはリスクも伴います。
資格取得の目的と費用対効果をしっかり見極め、可能であれば無料の講座や公的支援制度(教育訓練給付金など)を活用して、経済的な負担を抑える工夫が必要です。

特にキャリアコンサルタントや日本語教師などの「専門実践教育訓練給付金」の対象講座の場合、利用することで受講料の50~最大80%(上限64万円)の支給を受けることができるため、経済的な負担を抑えて資格取得を目指せます。
資格が必ず再就職に役立つわけではない
資格取得の目的として「再就職」を考えている人は多いですが、現実には資格だけで再就職がスムーズに決まるとは限りません。
特に年齢が進むにつれて、採用においては資格以上に「人柄」「経験」「柔軟性」が重視される傾向があります。また、せっかく資格を取っても、それを活かせる求人が通勤圏内にないケースもあります。
そのため、資格を取得する際は自分がその資格をどう活かしたいのか、希望する働き方(週何日働きたいか、収入はどの程度必要か)を明確にし、実際に求人があるかどうかを事前に確認した方がいいでしょう。

資格の取得が定年後の自身のキャリアや生活設計にどう結びつくかを考えながら、「資格+自分の強み」を組み合わせてアピールすることが、再就職成功のポイントといえるでしょう。

また、資格が絶対に必要というわけではない仕事であれば、まずは再就職して実務を経験しながら、並行して資格取得を目指す流れがおすすめです。
定年後の資格取得に関するよくある質問
ここからは定年後の資格取得に関するよくある質問について、Q&A形式で解説していきます。
60歳以降でも資格を取得することは可能ですか?
資格を選ぶ際は、自分の目的に合わせて選ぶことが大切です。
再就職を目指すのであれば、60歳以降でも需要の高い職種に関連した資格を選ぶのが効果的です。
一方で、生きがいや日々の生活に役立てたい場合は、自分の興味や関心のある分野の資格を選ぶことで、学びの時間もより充実したものになるでしょう。
資格を取得すれば再就職に有利になりますか?
勉強するのが久しぶりなので合格できるか不安です
試験対策に不安を感じる方は、通信講座や通学講座を活用することで、効率的に学習を進めることができます。
特に通学講座では、同じ目標を持つ仲間と一緒に学べる環境があるため、孤独になりがちな勉強期間でもモチベーションを維持しやすく、学習意欲の向上にもつながります。
国家資格を取れば定年後に独立できますか?
定年後に役立つ資格10選まとめ
本記事では定年後資格を取得するメリットや選び方、具体的なおすすめ資格について解説してきました。
定年後に役立つおすすめ資格は以下の通りです。
定年後に資格取得を検討する際は、資格の取得にかかる時間や実際に必要かどうかを踏まえたうえで、自分の目的や60歳以降のライフスタイルに合った資格を選ぶことが大切です。
人生100年時代といわれる今、定年後のキャリアや生活をより充実させるためにも、自分にとって最適な資格を見極めて選ぶようにしましょう。