社労士は独学合格が難しい?試験内容詳細や合格率やおすすめの勉強方法について解説!

検定学習イメージ社会保険労務士

働き方改革が導入に伴う働き方の多様化によって、人事・労務関係のスペシャリストである社会保険労務士への注目が高まっています。

社労士はこれまでは社会保険関係の手続きや就業規則の作成といった業務がイメージされがちでしたが、今後は人事・労務方面から会社の運営・経営に携わるような、コンサルティング的な役割での活躍も期待されています。

しかし、社会保険労務士は合格率が10%以下の難関国家資格となっており、誤った勉強方法では資格を取得することは困難です。

そこで本記事では、社労士試験は独学で合格出来るのかを、難易度や勉強方法などと共に解説していきます。

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社労士の仕事内容について

社会保険労務士の仕事は、社会保険労務士法によって定められています。

代表的な業務としては以下の通りです。

  • 労働社会保険諸法令に基づく申請書等及び帳簿書類の作成
  • 申請書等の提出代行
  • 申請等についての事務代理

これらの業務について、社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ、報酬を得て、業として行ってはならないとされており、社労士の独占業務とされています。

このような独占業務が存在し、社会や労働者に対して大きな責任が発生することから、社会保険労務士として看板を掲げるためには、国が定める社会保険労務士試験に合格しなくてはなりません。

社会保険労務士になるには

社会保険労務士になるのは、年に1回開催される国家資格に合格し、社労士として登録を行う必要があります。

社会保険労務士は人事・労務関係の仕事において唯一ともいえる国家資格であり、社会保険労務士法に定められた、いわゆる「士業」の一つです。

制度と関係してくるため、社会保険労務士の仕事内容をおさえておきましょう。

社会保険労務士試験に合格する

この試験は年1回、毎年8月頃に行われています。後述しますが、合格率が1割を切っている試験のため、相応の準備が必要となります。

試験範囲は非常に広く、会社員として働きながら社労士を目指す場合は、独学で試験に合格するのは難しいといえます。

社労士試験の受験資格

社会保険労務士試験にはいくつかの受験資格が設けられています。

受験手続きの際、受験資格を満たしているかを確認するために、卒業証明書などの書類の提出を求められます。

社会保険労務士試験に挑戦をする前に、ご自身が受験資格を満たしているか、必ず確認しておきましょう。

具体的には、以下のいずれか一つの条件を満たす必要があります。

社会保険労務士の受験資格

  • 学歴
  • 実務経験
  • 国家試験合格

※参照:社会保険労務士試験オフィシャルサイト「受験資格について」

上記のいずれかを満たせば国家試験に挑戦することが可能になるため、自身が該当する、もしくは取得可能な受験資格をしっかり確認しましょう。

社労士受験に必要な学歴

多くの人が選択するのが、「学歴による受験資格」です。

大学や短期大学、高等専門学校(5年制)などを卒業、あるいは専門職大学の前期課程を修了した人が対象となります。

3年制の高等学校卒業の場合、後述する実務経験を積むなど、別のルートを考える必要があります。

また、学校を中退された方も以下にあてはまる場合は受験資格が認められています。

大学の場合は62単位以上の卒業単位を修得している場合に、短期大学の場合は全国社会保険労務士会連合会の審査で学校教育法に定められている短期大学を卒業した人と同等以上の学力が認められる場合に、受験可能となります。

実務経験でも受験可能

社会保険労務士や弁護士の補助・健康保険組合や労働保険組合での勤務・公務員職として3年以上業務に従事した経験などがあれば、受験資格を得られます。

ご自身の経験が実務経験に該当するかどうかは、全国社会保険労務士会連合会に問い合わせを行えば回答を得ることができます。

社労士事務所に勤めていてもルーチンワーク中心の場合は実務経験とみなされないケースもあるようなので、事前に確認しておくと確実でしょう。

特定の国家試験に合格

行政書士試験・税理士試験・弁理士試験・公認会計士試験など、厚生労働省が認めた国家試験に合格している場合は受験資格があります。

ほか、平成23年までに行なわれていた旧司法試験の教養科目である、司法試験第1次試験の合格者も社労士試験を受けられます。

社労士として登録するには2年以上の実務経験が必要

実は、社会保険労務士試験に合格しても、即座に社労士となれるわけではありません。

社労士試験に合格後、全国社会保険労務士連合会から案内される登録を行う必要があります。

社労士として登録をおなうためには、2年以上の実務経験が必要となります。当該実務経験は試験合格前後を問わないため、すでに2年以上の実務経験を積んでいる方であれば、そのまま登録することができます。

もし「試験には合格したけど実務経験は無い(2年に満たない)」という場合は、事務指定講習を修了することで社会保険労務士として登録することが可能となっています。

事務指定講習修了

実務経験がない場合は、事務指定講習を受講することで「2年以上の実務経験に代わる資格要件」を満たすことが出来ます。

事務指定講習は、以下の課程によって行われます。

事務指定講習について

  • 通信指導課程(4月間)
  • eラーニング講習または面接指導課程(4日間)

講習費用などは必要になりますが、社労士試験に合格した人は実務経験がなくても、合格後に「事務指定講習の修了」を行うことで、社会保険労務士として登録を行うことが出来ます。

社会保険労務士試験の難易度

さて、社会保険労務士試験の受験を考えている方は、試験がどの程度難しいのか、どの程度勉強すれば受かりそうなのかといった、試験の難易度が気になるところかと思います。

まずは、試験の合格率から見ていきましょう。

社労士試験の合格率は6~7%前後

以下、社会保険労務士試験の、直近6年間の合格率となります。

実施年度申込者数(名)受験者数(名)合格者数(名)合格率
令和4年度52,25140,6332,1345.3%
令和3年度50,43337,3062,9377.9%
令和2年度49,25034,8452,2376.4%
令和元年度49,57038,4282,5256.6%
平成30年度49,58238,4272,4136.3%
平成29年度49,90238,6852,6136.8%
参照:社会保険労務士試験オフィシャルサイト「合格発表」

図を見ていただくと分かるように、全体的には合格率6~7%前後で推移していますが、最新のデータである令和4年度の合格率が5.3%、その1年前である令和3年度の合格率は7.9%であるなど、ややバラつきも見られます。

ちなみに、合格までに必要な勉強時間は約800~1000時間程度と言われており、かなりの勉強時間を要する国家試験といえます。

他の資格試験との比較

さて、ここまで社労士試験の合格率をお伝えしましたが、この数字だけでは試験の難易度を実感しづらい人もいると思うので、ほかの資格と合格率を比較してみましょう。

例えば、法律関係の試験の最高峰と思われる司法試験の合格率はおよそ30%です。

社会保険労務士試験よりもかなり高い数字ですが、かといって司法試験が社会保険労務士試験より簡単だというわけではありません。

そこで、試験の内容を含め、他の士業試験と比較してみましょう。

司法書士試験

まずは、法律に関わる国家資格として有名な司法書士試験についてみてみましょう。

依頼者に代わり登記の申請手続きを行う業務のため、試験では幅広い知識が要求されます。

憲法・民法・刑法・商法・供託・民事訴訟・執行・保全・供託・司法書士法といった司法書士の職域分野に加え、基本的な法律科目が出題されます。

さらに、司法書士試験は論述を含む筆記試験で絞られた後、口述試験をクリアする必要があります。平均的な勉強時間は3000時間程度と言われており、合格率は3~4%前後

一般的に社会保険労務士試験よりも難易度の高い試験だと考えられています。

税理士試験

所得の計算や納税額の算出など税務の代理を行う税理士ですが、所得税法などの法律、理論と計算が求められる財務諸表論など、計11科目が試験科目となります。

科目数は多いのですが、科目合格制のため、5科目クリアすれば合格とみなされます。

また、一度合格した科目は翌年以降、永久に免除されるため、年数をかけて学習することができます。

出題範囲が広く、高度な計算力も求められるにも関わらず、合格率が15~20%とそれなりに高いのは、この制度によるところが大きいと考えられます。

勉強時間は3000時間程度が目安となり、難易度自体は社会保険労務士試験よりも高いといわれています。

中小企業診断士試験

社会保険労務士が労務面から会社を支えるのに対し、中小企業診断士は経営面から会社運営をサポートする仕事です。

1次試験・2次試験から構成され、「経済学・経済政策」「財務・会計」「経営法務」などの7科目となります。

試験全体での合格率は4%前後、合格に必要な勉強時間は1000時間程度と、社会保険労務士試験と同等かっや難しい難易度と考えられています。

科目免除制度も設けられているのですが、明確な回答が提示されていない口述試験が2次試験に設けられているところがポイントです。

宅地建物取引士試験

合格率は15~17%と、1割を越えています。

試験科目は宅建業法・民法などの権利関係などの4科目。合格までに必要な時間は200~300時間といわれており、社会保険労務士の方が難易度が高いと考えられます。

ファイナンシャルプランナー1級

士業ではありませんが、年金など、試験科目に重複する箇所があるファイナンシャルプランナー1級(FP)をみておきます。

ファイナンシャルプランナーの試験内容は、ライフプランニングなどの6科目に加え、実技試験が設けられており、簡単な試験ではありません。

合格までに必要な勉強時間は600時間程度とみられており、こちらも社会保険労務士の方が難易度が高いとされています。

社労士試験の難易度まとめ

社会保険労務士の試験合格率やいくつかの資格試験との比較したうえでの結論としては、社労士の試験はかなり難易度が高いと考えられます。

科目数や勉強時間だけでなく、暗記が苦にならないか・計算力があるか・口述試験に強いか等、ご自身の得意分野や科目に対する関心の強さによって、合格するかどうかが大きく左右されるでしょう。

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社会保険労務士試験合格が独学では難しい理由

社会保険労務士試験の合格率が低くなる原因をお伝えしてきましたが、「それでも、勉強さえすれば独学でも受かるのでは?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、独学で合格している方もおり、費用が節約できるというメリットはありますが、結論としては独学で合格を目指すのはかなり難しい資格であるといえます。

ここからは、社会保険労務士試験が独学では難しいとされる理由を説明していきます。

専門的な科目内容

社会保険労務士試験の試験範囲は非常に広く、独学で学習をすることが難しい要因のひとつとなっています。

試験科目、および配点は以下の通りです。

試験科目選択式択一式
労働基準法および労働安全衛生法1問(5点)10問(10点)
労働者災害補償保険法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)1問(5点)10問(10点)
雇用保険法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)1問(5点)10問(10点)
労務管理その他の労働に関する一般常識1問(5点)10問(10点)
社会保険に関する一般常識1問(5点)労一と合わせて10点
健康保険法1問(5点)10問(10点)
厚生年金保険法1問(5点)10問(10点)
国民年金法1問(5点)10問(10点)
合計8問(40点)70問(70点)
※社会保険労務士試験オフィシャルサイト「試験の概要 社会保険労務士試験の概要(1)試験科目」

労働基準法等だけではなく、社会保険・年金など、実際の業務に関わる専門的な法律まで、網羅的に出題されます。

全ての科目につき、選択式・択一式ではありますが、かなり広い範囲を勉強しなくてはなりません。問題数も多く、試験ではある程度のスピードが求められます。

それぞれの法律について、以下に詳細を解説させて頂きます。法律や条例の理解・細かい計算など、勉強する上でそれぞれに難しい部分があるため、しっかりチェックしておきましょう。

労働基準法

労働基準法は、労働者の権利を守るための代表的な法律です。

労働時間や年次有給休暇・賃金など、労働者に直接かかわる事項が多いため、殆どの方がその存在自体にはなじみがあるかと思います。

身近な法律ゆえにとっつき易い科目に感じられるかもしれませんが、条文だけではなく、通達や判例など細かい部分から出題される事例問題もあり、試験科目としての難易度は高めです。

条文を覚えるだけでなく、旬のテーマに注目しながら、労働基準法や判例への根本的な理解が必要な科目だと捉えておくとよいでしょう。

労働安全衛生法

労働者を危険や病気・傷害から守る目的で作られた法律で、会社員が健康診断を義務付けられているのは、この労働安全衛生法によるものです。

労働基準法と一括りで出題されますが、きちんと勉強していれば取れる問題と、難易度の高い問題が出題されやすいようです。

前者が落とせない訳ですが、範囲が広いため、基礎固めだけでも時間を必要とするでしょう。

もし労働安全衛生法について全く勉強したことがない人であれば、練習のために労働安全衛生法について問われる「衛生管理者」の資格取得を目指してみるのも良いでしょう。

労働者災害補償保険法

「労災」という言葉は聞きなじみがある方も多いと思います。

通勤途中や業務上の災害、あるいは病気に対し、労働者がこれまでどおりの生活を送れるよう、国から補償を受けることができるのは、この労働者災害補償保険法によるものです。

労働者ではなく雇用する側が加入する保険なのですが、給付に対する要件があるため、その要件や内容をきちんと把握しなければなりません。

社労士として実務を行う際にも、扱う頻度と重要度の高い法律となるため、しっかりと学ぶ必要があります。

雇用保険法

労働者が失業した際、基本手当が支払われることで再就職までの生活を維持する、いわゆる失業保険が代表的です。

ですが、実は育児休業・介護休業・教育訓練を受けた際に補助を受けられる制度も、雇用保険法に定められた制度で、誰しもに身近な法律といえるでしょう。

決して難易度が高い訳ではありませんが、20以上の給付手当の名称・給付要件・所定給付日数など、細かい数字を覚えているかを問われる問題が多いようです。

労働保険徴収法

先述の、労働者災害補償保険と雇用保険の制度は、労働者と事業主から徴収されている保険料で維持されています。この科目で問われるのは、その仕組みです。

主に、保険料の徴収方法・計算方法・割合や端数処理といった部分を学びます。

科目の性質上、計算問題が出題される場合がありますので、仕組みを理解した上で、過去問などでしっかり訓練しておく必要があるでしょう。

労働管理その他の労働に関する一般常識

男女雇用機会均等法・育児・介護休業法・労働者派遣法など、労働に関する法律全般から出題されます。

また、労働経済・人事労務管理など、法律ではない分野からも出題され、出題範囲にはっきりとした制限がないと考えて差し支えないでしょう。

予想しづらい部分があるので、深追いしすぎず、労働経済白書などで最新の動向を把握し、他の受験生が取れる問題は落とさない、という意識で対策を取ることになるでしょう。

受験生にとっては鬼門になりえる科目ですので、もし独学で臨む場合にはしっかりアンテナを張って情報を収集する必要があります。

健康保険法

仕事以外のけが・病気の際に発生する医療費の補助を目的とした法律が健康保険法です。

こちらも馴染みがあるように感じられますが、試験範囲は広く、条文・通達を組み合わせた難問も出題されています。

健康保険の仕組みや保険料・手続きなど、さまざまな要素についてまんべんなく理解した上で、高額療養費などの計算問題にも対応しなければならない点には注意が必要です。

国民年金法

国民年金は、自営業・会社員・公務員など、基本的に20才以上の国民全てが加入する年金制度です。

制度の仕組みから歴史・年金財政・転職の際の加入脱退手続きなど、出題内容は多岐にわたります。

後述する厚生年金保険法ほど制度が複雑な訳ではありませんが、老齢・障害・死亡による「基礎年金」の支給保険料の納め方など、制度の細かい部分について勉強しなければなりません。

年金関係の基礎となる内容であり、こちらを理解していないと、次の厚生年金保険法でつまづいてしまいます。

厚生年金保険法

厚生年金保険は、先述した国民年金に加え、公務員や会社員が加入する年金制度です。

この科目では、保険事故に対し支給される制度の仕組みを学びます。元々範囲が広い上、法改正を繰り返したことにより複雑化した制度を理解することがポイントです。

健康保険法・国民年金法を理解した後に取りかかり、それらと混同せず、どこがどう違っているのかなどを対比しながら学ぶと効果的です。

また、法改正を重ねたため、細かい経過措置が存在しますので、試験勉強においてもその部分を押さえておく必要があります。

社会保険に関する一般常識

介護保険法・確定給付企業年金法・確定拠出年金法ほか、社会保険に関する法律全般について学びます。

厚生労働白書の内容についても出題範囲の対象となるため、医療・年金・介護・子育てなど、厚生労働省がいま特に力を入れている部分を押さえておきましょう。この科目は「労務管理その他労働に関する一般常識」と同様、出題範囲をカバーするのが難しいという特徴があります。

独学で臨む場合はしっかりアンテナを張って情報収集しつつ、試験直前には模擬試験等を受けて知識の確認を行っておくのがオススメです。

各科目ごとに合格基準点が設けられている

社会保険労務士試験は、選択式試験及び択一式試験のそれぞれの総得点と、各科目ごとに合格基準点が設けられているのが特徴です。

得意な科目で高得点を取り、総得点が合格基準点に達していたとしても、他の科目で基準点に達していなければ足切りされてしまいます。

これが社労士試験の難易度を引き上げている要因の一つで、バランスよく得点することが求められているため、試験勉強に取り組むうえで「苦手な科目を捨てる」という戦法は取れません。

合格基準が毎年違う

社会保険労務士試験は、その年ごとに試験の難易度に差が生じることから、毎年、合格基準を調整しています。以下は過去6年間の合格基準一覧となります。

実施年度①選択式試験合格基準②択一式試験合格基準
令和4年度総合得点27点以上
かつ各科目3点以上
総合得点44点以上
かつ各科目4点以上
令和3年度総合得点24点以上
かつ各科目3点以上
総合得点45点以上
かつ各科目4点以上
令和2年度総合得点25点以上
かつ各科目3点以上
総合得点44点以上
かつ各科目4点以上
令和元年度総合得点26点以上
かつ各科目3点以上
総合得点43点以上
かつ各科目4点以上
平成30年度総合得点23点以上
かつ各科目3点以上
総合得点45点以上
かつ各科目4点以上
平成29年度総合得点24点以上
かつ各科目3点以上
総合得点45点以上
かつ各科目4点以上
※厚生労働省「社会保険労務士試験の結果について」

選択式が40点満点・択一式が70点満点であるため、全体として6~7割程度正答できていれば合格する試験ですが、合格基準点が毎年違っているため、「あと1点」に泣く受験者も出やすい試験です。

年1回1日のみの試験である

試験は年1回、8月に行われる試験のみです。

合格率が非常に低い上に不合格の場合は次のチャレンジが「早くても1年後」になってしまうため、モチベーションを保ち続けることが難しい試験といえます。

翌年以降の科目免除制度がない

社会保険労務士試験の場合、試験結果は一切、翌年に持ち越されることはありません。

今年不合格であった場合は、来年以降、改めて8科目全ての試験を受けなければなりません。

そのため、社労士試験合格を目指す方の中には3~4年以上かけてようやく合格を勝ち得る人も多く、この辺りも受験生泣かせの試験だといえるでしょう。

効率のよい学習スケジュール作成が難しい

試験は1年に1回・捨て科目を作ることができない・免除制度も存在しないとなると、試験時期に全ての科目の習熟度を合わせる必要があります。

そのためには、どの科目から勉強するかという優先順位を考えなくてはなりません。

例えば、細かい暗記科目はあまり早いうちに始めると忘れてしまうので後半に、白書や統計対策は最新の情報が出てから…等、いつからどの科目を始めるのか、習熟するにはどの程度の時間がかかるのか、どの程度習熟すべきなのか等、戦略的にスケジュールを立てる必要があるでしょう。

質問できる環境が必要

この試験に限った話ではありませんが、独学の場合、「分からないことをすぐに聞けない・確認できない」ということが大きなネックとなります。今なら、インターネットの専門サイトなどに質問を投げれば教えてくれる人もいるかもしれませんが、本当に正しいのか保証はなく、また、いつ回答してくれるのかも分からないため、確実な対策とはいえないでしょう。

最新の法改正や統計などの情報収集

受験生が苦手とする科目としてよく挙げられているのが、先述した「一般常識」です。

毎年のように行われる法改正や統計の解読は過去問では対応できず、問題を解くにあたり、特別な対策が必要です。労働経済白書・厚生労働白書などは日常的に見る人は少なく、情報収集するだけでも、それなりの時間を費やすことになるでしょう。

試験傾向が読みづらい

先述した通り、最近の社会保険労務士試験は合格率に幅があります。合格基準点も一定ではありません。法改正が頻繁に行われるため、その年によって出題内容が変わってくることが一因かと思われますが、「このテキストを覚えれば合格する」という試験ではありません。個人で、その年の試験傾向を読むことは難しいのではないでしょうか。

勉強時間の確保が難しい

合格までに必要な勉強時間は800~1000時間程度とお伝えしましたが、勉強時間を1年として単純計算すると、1日2~3時間程度の学習が必要となります。

そして、社会保険労務士試験を受験する方は社会人の方が多いのが特徴です。過去10年における、合格者の職業別割合を挙げておきましょう。

職業割合(%)
会社員61.0
無職11.0
公務員7.7
団体職員4.7
自営業4.4
役員3.6
学生0.6
その他7.0
参照:社会保険労務士試験オフィシャルサイト「合格発表(過去10年の推移と合格者の年齢階層別・職業別・男女別割合)」

保険や年金などに関心を持ち、それらを仕事に生かそうと考えるのは、社会人の方が多く、何かしらの形で働いている方が7割以上を占めています。

そのため、多くの受験生は学生時代のように勉強に集中できる訳ではなく、「働きながら受験勉強をする」というスタイルになります。

さらに、受験される方の年代はどうでしょうか。過去10年における、合格者の年齢別割合をみてみましょう。

年齢層割合(%)
24歳以下1.6
25-29歳9.1
30-34歳15.1
35-39歳15.3
40-44歳15.6
45-49歳16.1
50-54歳11.9
55~59歳8.2
60歳以上7.1
参照:社会保険労務士試験オフィシャルサイト「合格発表(過去10年の推移と合格者の年齢階層別・職業別・男女別割合)」

全体の9割近くが30代以降の受験者です。

家庭を持っており、育児・介護などに時間を必要とするケースもあるでしょう。仕事や家庭を両立しつつ、800~1000時間の勉強時間をねん出するとなると、勉強における効率の良さは必須といえます。

これまで述べてきたように、社会保険労務士試験は1年に1回、一発勝負の試験です。

効率的な勉強スケジュールを考え、分からない問題の答えを探し出し、最新の統計を集め…というようなことを一人で行っていると、相当な時間がかかるでしょう。勉強へのモチベーションを考えると、効率よく、短期間での合格を目指すのが必勝パターンのひとつといえます

社会保険労務士試験のおすすめ勉強法

資格勉強イメージ

最後に、社労士試験合格のために効率よく勉強するためにはどうすればよいか、選択肢を幾つか見ていきましょう。

予備校・スクール等に通学する

代表的な予備校・スクールの殆どには、社会保険労務士試験コースが設けられているかと思います。これらに直接通うメリット・デメリットは以下の通りです。

最適なカリキュラムが組まれている

予備校・スクールには、過去何年間にもわたる実績があります。多数かつ複雑な科目に対し、合格までの最適なカリキュラムが組まれているため、「何をすれば良いのか」を考える時間を大幅に節約することができます。

質問する環境が用意されている

経験豊富な講師がいるため、その場で疑問点を質問し、解決することができます。経験を基に最新の情報収集が行われ、予想問題も立ててもらえるのも大きなメリットです。勉強の優先順位や勉強法などについても相談に乗ってもらえるため、長丁場の勉強期間において、心強い存在となるでしょう。

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モチベーションを保ちやすい

社会保険労務士試験の受験を考えている方は、社内の人事部で責任ある立場を目指している・独立を考えている等、強い目的を持っている方が多いと思われます。

それでも、長い勉強期間を過ごすうち、モチベーションが落ちてしまう時期もあるかもしれません。そのようなとき、講師や同じ目的意識を持った人と交流することで、モチベーションを保つ効果があるでしょう。また、独立なども視野に入れている方の場合、人脈を作るチャンスがあるかもしれません。

通学時間・費用のコスト

通学におけるデメリットとなりますが、やはり移動時間と移動コストがかかります。また、専門教師から一定時間授業を受けるため、学費も発生します。科目別コースなど、学校ごとにさまざまなカリキュラムが用意されているため、立地や合格率などを含め、ご自身に合った学校を検討してみると良いと思います。

通信講座を受ける

タブレットの普及・コロナ禍によるリモート学習推進などにより、各スクールとも、通信講座にさらに力を入れるようになったと思われます。

「カリキュラムが組まれている」「質問できる」というようなメリットは通学する場合と同様で、オンラインレッスン・動画教材が充実している現在は予備校に直接通う以上のメリットがある学習方法といえます。

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通学に比べ、時間・費用上のメリットが大きい

通信教育の場合、学校に通う必要はありません。

場所や時間に自由が利くため、自身のライフスタイルに合わせた勉強が可能です。

また、通学の場合と比べ、かかる費用も格段に安くなるのもメリットのひとつといえます。

社会保険労務士の独学についてまとめ

本記事では、社労士試験が独学合格が困難である理由とおすすめの勉強法を解説させていただきました。

ただし、科目数が多いとはいえ、それぞれの内容に関連性があるため、習熟していけば理解も深まります。

また、難易度の高い試験ではありますが、独占業務を持った資格のため合格すれば独立も可能な資格です。独立を考えていない場合も、働き方が多様化する現代、企業のありかたも変化を求められているため、従来の業務だけでなく、企業の運営に深く関わることも可能になる資格といえます。

目的意識があり、試験科目に関心をもつことができれば、挑戦する価値のある資格試験ですので、興味がある人は是非自分自身にピッタリ学習方法で合格を目指していただけると幸いです。

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この記事の筆者
キャリアコンサルタント
パオ助

介護業界専門の転職エージェントで両面型担当者として勤務後、今はマーケティングとキャリアコンサルタントを両立中。
キャリアコンサルタントとして、人材業界や介護業界についての情報を発信中!転職エージェントや人材派遣会社で勤めている方々全員に「キャリアコンサルタント」の資格を取得してもらうのが夢。
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